どうでもいい嘘って嫌いじゃない。
「カキフライが無いなら来なかった」せきしろ、又吉直樹 著
おそばせながら、芸能界一のイケメンピース又吉の処女作を購入。評判の良さは知っていたけども期待を裏切らない出来。そこらの芸人本と一緒にしてもらっては困る!(知名度が低すぎて芸人本のカテゴリにはもともと入らないので困ることはない)
以下紹介分引用
「無修正の心」をありがとう。―穂村弘(歌人)
妄想文学の鬼才と、お笑いコンビ「ピース」の奇才が読む
センチメンタル過剰で自意識異常な自由俳句四百六十九句。
散文二十七篇と著者二人による写真付き。
文学すぎる戯言か
お題のない大喜利か
というわけで、自由俳句。自由俳句ってどんなん?私も最初紹介分を読んだ時には「?」でした。
要するに一行ポエムといった感じ。ちなみにこの本のタイトル「カキフライがないなら来なかった」も自由俳句の一篇です。(又吉作)
今日のお昼は何食べよう。昨日何食べたっけ。ああ、そういえば食べてないや。じゃあ久々に豪華なもの食べてもいいんじゃないかしらと誰にともなく言い訳。
そういえばカキフライ食べてないな。…ちょっと豪華すぎるか?いやいや、だって昨日お昼食べてないし、夜自炊したし。よっしゃ決まりカキフライ。
もう心の中はカキフライでいっぱい。唇も下も喉も胃も、カキフライが来る、ということで準備を始める。
衣はちょっと硬いぞとか、熱い汁が飛び出して火傷するぞとか、不意打ちで苦いから注意とか。
もう体全体でカキフライを包み込む、という準備が整って3回目に入る定食屋の2回目に座る席。「この席とは縁があるなあ」
えーと、カキフライカキフライは…と。えーと、えーと。
この後しばらくして、必死で豚の生姜焼きに体制を立て直そうとするのだが、最新の注意を払って行われた準備がそう短時間で立て直しを許すはずもなかったのだ。
…という顛末が「カキフライがないなら来なかった」というたった一篇から勝手に想像できるわけです。
他にもくすっと笑った自由俳句を何篇か抜粋。
手羽先をそこまでしか食べないのか(せきしろ)
蚊に刺されるために生きたような日だ(せきしろ)
すまないが狐の影絵しかできない(せきしろ)
歯痛のうえ雨が降るとは(又吉)
一人なのに天狗のお面をつけてしまった(又吉)
ほら白い息吐かないように呼吸できるよ(又吉)
ぱらぱらっとめくって、思わぬ言葉にくすっと笑う。その軽さがなんだかいいなーと思います。
軽いんだけど、ちょっとおかしくてちょっと悲しい。
人間味が、一番の魅力です。
というわけで、触発されて私も何句か詠んでみようと思いました。…だれもそんなもの興味はないんだろうけど、この本を読んだらみんな触発されたくなる…もんだと思う。
作り笑いには気づいているが続行
具体的には何が嫌なのか
牛乳は鬼門と知っている
…うーむ、なかなか難しいもんです。自己評価がむずかしい。
でも嫌なことも悲しいことも、こうして自分で皮肉ってみるのはすがすがしい気分。そんなちっちゃなことで馬鹿じゃねーの、と自分を振り返る。
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